月別アーカイブ: 2012年10月

ケミカルウォッシュとは(chemical wash)


ケミカルウォッシュとは、ジーンズを人工的に中古風に加工する方法の一つで、塩素系の漂白剤を混ぜた洗剤で ムラになるように脱色する加工の事です。化学的にするので ケミカルと言います。

ストーン・ウォッシュの方法を併用して、ゴムボールや軽石などを一緒に入れると こすれて使い込んだような自然な感じに脱色できます。
(まだら模様になります。私も大昔 ジーンズを塩素系の漂白剤で 脱色しましたが、ただ洗濯機で回すだけでは 使い込んだ感じには脱色できませんでした)

1986年にイタリアのライフル社が世に送り出した、一世を風靡した加工方法です。2011年初め頃より人気再燃しているようです。

ただ 塩素系の漂白剤と 軽石等を使った加工は 布生地自体を傷めます。
(私は 個人的には好きになれません。ストーン・ウォッシュの項でも書きましたが、製品の寿命を縮める上に 有害な薬品を使ったりで環境負荷が高いです。塩素系の漂白剤は 布生地を傷めますので あまり頻繁に使わない方がいいです。

私の母がそうで、綺麗になったように見える(リンク先の最後を参照)ので 頻繁に使い、よく下着や服が破れました(笑)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ストーンウォッシュとは(stone wash)


ストーンウォッシュとは、人工的に中古風に加工する方法の一つで、軽石 人工研磨石 セラミック等を入れて洗う加工方法です。ジーンズが有名ですが、ジャンパー 皮製品等にも使われます。

ジーンズでは、柔らかくなり とてもはき易くなります。また「アタリ」(擦りきれ)もできて ジーンズ特有の顔(表情)が出てきます。

元々は 河原の石を使っていたようですが その後人工研磨石が使われ(ストーン・ウォッシュの名前が定着)、軽くて機械に負荷の少ない軽石が使われるようになりました。今では セラミックやゴムボール(バイオ・ウォッシュに使用)も 使われるようになってます。

軽石には 大 中 小と大きさがあり、人工研磨石には 三角形 四角形 星型 球形などの形があります。使っていく内に だんだん小さくなるので、一定時間稼動させると ふるいにかけて 小さくなったものは除いて 新しい石を補給するそうです。

新しい石には 尖った部分もあるので、一度空回しして 丸みをつけるそうです。

ですが、下記のような いろいろな問題もあります。

  • ポケット等の砂(石の屑)を 取り除いてやらなければならない。(たぶん 人手でポケット布を裏返して 出しているのだと思います)
  • 大量に発生する砂をどう処理するのか(ケミカル・ウォッシュの場合は 次亜塩素酸ソーダ等の薬品が入っているので よりやっかい)。
  • 頑丈な洗濯機(ワッシャー)が必要で 機械の傷み方も速い。
  • 同じ機械で 製品染めなどをすると、砂の残りや機械の中の傷で その製品に擦り切れやアタリが発生する。

(余談ですが、私個人的には 古着加工は好きではありません。確かにカッコいいかも知れませんが、製品の寿命を確実に縮めます。有害な薬品を使ったり、機械の損耗を速めたりと環境にも優しくありません)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

セルロースとは(cellulose)


セルロースとは、コットン(綿) 麻やレーヨン ベンベルグ アセテート等の主成分で、植物のほとんどは この成分よりできてます(植物細胞の細胞壁の主成分、全植物成分の1/3を占めると言われてます)。自然界に最も多く存在する炭水化物(有機化合物)です。

(化学式や物性等の詳細は 次をクリックしてください。 セルロース )

水や熱水に溶けず 人間は消化する事ができません。(草食動物は消化できます) 第五の栄養素と言われる 繊維素はセルロースからできています。

セルロースは、1838年フランスのパヤン(Anselme Payen, 1795‐1871)によって、高等植物の細胞(セル)壁を構造する糖の意味で名づけられました。1844年 マーセル(John Mercer, 1791‐1866)はセルロースとアルカリの反応(マーセライズ加工 マーセリゼーション)を研究し、工業的利用への道を開きました。

めがね枠のセルや セルロイド製に人形は、セルロース化合物で 硝酸セルロースです。(非常に燃えやすいので 現在では あまり使われてません)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

バイオ加工とは


バイオ加工とは、特殊な酵素を使って微生物に布生地の表面を食べさせる加工です。

セルロース(コットンやレーヨンの主成分)の分解酵素(セルラーゼ酵素)を利用したもので、微生物を含むバイオ溶液につける事によって、布生地を柔らかくしたり 古着感覚を出したりします。

ジーンズなどの洗い加工の一つです。固くて欠点の多い繊維だったテンセル(リヨセル)は この処理等(柔らかくする加工には 他にも「もみ処理」「たたき処理」等があります)によって 柔らかい布生地になりました。シルク(絹)の精練(練り)や ポリエステル減量加工と同じような手法です。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ふくれ織とは(フクレオリ) マトラッセ/クロッケ(matelasse/cloque(仏) 紋ピケ 紋ピッケ


ふくれ織とは、マトラッセ(matelasse)、クロッケ(cloque 最後のeには 上に点が付きます) とも言い 二重織の浮いた部分と結節部分で 凹凸の模様を表した織物です。紋ピケ(紋ピッケ)は、ピケの手法で 盛り上がった柄を作ったも織物で ふくれ織に属します。

下記の写真がその例です。
(写真は「京都 着物通販【きものACT】」さんより 転載しています)

ふくれ織の布生地例

ふくれ織の布生地例

ジャガード織機でしか製織できず 非常に珍しい織物で高価です。

マトラッセの語源は「寝床、物を横たえる場所」といった意味のアラビア語(matrah)からきているものと思われます。英語ではマットレス(mattress)に相当します

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

袋織とは(フクロオリ)


袋織とは、経緯二重織で 織組織の中に結節点(上下の布生地をつなぐ部分)をもうけないで、両端の耳部分だけ繋がっている布生地です。袋状になっているので この名前があります。(下を縫い合わせれば 本当に袋として使えます)

ほとんど見かけない織物で 私も実物を見たことがありません。

昔のフライシャトル織機では 繋がった部分をもうけなくても良かった(耳部分でつながる)のですが、最近のシャトルレス織機では 別途作る必要があります。

もうすぐ廃業されますが、みやしん(株)さんでは ニューヨークの自由の女神のストールを この袋織の手法で作られたそうです。1.5mくらいの巾の布生地しか織れない織機で、袋織の手法を応用して 数十mの巾の布生地を織られたとか。

(何重にも織って 両端だけカットして 広げて数十mの巾の布生地にしたそうです。
みやしん(株)さんのリンク先は みやしんさんにしてありません。大変残念ですが、近い将来なくなると思いますので)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

風通織とは(フウツウオリ) 風通


風通織とは 風通とも言い、二重織の一種で 小さな袋状の模様が現れる織物です。中に風が通ると意味から風通と名づけられたと言われています。

表側の経糸・緯糸と 裏側の経糸・緯糸に それぞれ違う色を使い、緯糸を変えたりする組み合わせで多色の風通(三色風通 四色風通等)ができます。下記のようです。
(裏では 対の配色の同じ模様が 現れます)

風通織物例

風通織物例

(上記画像は 「着物が着たくなったら、着物用語集」さんより 転載しております)

この布生地を織るジャガード織機自体が 数が非常に少なく、また 多種多様な柄がいくらでも作れる事から(完全受注生産 自由度がありすぎるので逆に定番品がない) 風通織の布生地は非常に高価で貴重なものと思われます。

(cf. 布生地とは一期一会 )

この記事は 生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ベルベットとは(velvet) ビロード(天鵞絨)


ベルベットとは、ビロード(天鵞絨)とも言い 柔らかな短めの毛羽で覆われた、光沢のあるなめらかな織物です。豪奢でドレッシーな趣があります。

元来は 絹の経糸をパイル毛にしたパイル織物を言いましたが、現在はアセテートレーヨンを経糸にして 多く作られています。(他の繊維に比べて アセテートやレーヨンの細い毛は手触りが良い)

製法としては、下記があります。北陸地方では 下の方法で多く作られてます。(外観はベロアに良く似てますが、製法は違います。cf.ベロアとは

  • 針金を挿入して他組織とパイルを交互に作る
  • 二重織にして それを真ん中から切り離す

下記動画は その織方を写したものです。1分過ぎ辺りから、織っている様子と それを真ん中でカットするナイフが右左に走っている様子がわかります。(山崎ビロード製作)

毛はレーヨン 毛の下の地組織(地生地)は、ポリエステルで作られる事が多いです。(ビロードの毛が柔らかくなり 下生地はポリエステルの為に強い)

オパール加工の手法を利用して 毛の部分を溶かすと、ベルペットの毛羽模様の面白い布生地が出来あがります。
(パリコレ参加ブランドの 又はそれに近い実力のあるデザイナーさん達や アパレルさんに 良く使われているそうです)

この記事は 生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

スエードクロスとは(suede cloth)


スエードクロスとは、スエードに似せた人工スエードの事です。繊維素材はほとんどポリエステルで、超極細(糸の中の1本のフィラメントの太さが0.5デニール以下程度)のフィラメントを使います。

スエードとは(suede)、カーフ(子牛の皮) キッド(仔山羊) ピッグスキン(豚皮)などの小動物が主体で、皮の表面をサンドペーパー等でけずり、ビロードのような感触に仕上げたものです。非常に細かい仕上げのものはシルキーと言われています)

基布は不織布 織物 ニットがあり、これにウレタン系樹脂を含浸させて 起毛した物が多いです。

本物の皮のスエードに比べて 手触り等はやや違いますが、軽くて発色性も良く 取り扱いが簡単なので、コート ジャケットなどに使われます。均質なので 自動車のシートや 家具などにも広く使われています。熱に弱いのが最大の弱点です。(たばこの火の粉等で 簡単に穴が開いてしまいます)

この記事は 生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

起毛とは(キモウ raising)


起毛とは、布生地の表面をひっかいて 毛羽(ケバ)を出す加工です。これにより 布生地の表面を毛羽が覆い 手触りが柔らかくなり、独特の外観、厚みが出て温かみのあるものになります。糸や布の織組織を隠したり、柄物の輪郭をぼかす効果をねらう場合もあります。

通常は片面だけの起毛ですが、より保温効果等を出すために 両面起毛する場合もあります。また布生地を柔らかくする目的で あえて裏側を起毛する場合があります。(起毛により 布生地が揉まれるのと、織組織が多少でも崩され 若干でも薄くなる事が 影響するのでしょうか?)

 フランネルネルスエードクロス(人工皮革)が 代表的な起毛製品です。起毛の後に、ブラッシング(brushing)で毛羽の方向を揃えたり、シャリング(shearing  煎毛)により 毛羽の長さを揃える事もあります。

起毛には 湿式と乾式があり、湿式の方が起毛効果が高いです。合繊や綿(コットン)等の起毛には 針金(シンプ)を植えつけた針布を使い、上質の毛織物には 薊(アザミ)の実を使います。

(たぶん 薊の実を使った方が、細かい上品な毛羽になるのだと思います。ですが、薊の実の耐久性が 針布より低いので、生地値の安いものには 使いにくいのでしょう)

この記事は 生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。