月別アーカイブ: 2012年11月

転写捺染とは(テンシャナセン transfer style print) 転写 転写プリント


転写捺染とは、単に転写とか転写プリントとも言い 子供の遊びに使われる「写し絵」と同じ手法です。あらかじめ 図柄を紙に印刷しておき、布生地に重ねて圧力と熱を加えて 図柄を転写させる方法です。

多品種少量生産に向いているので 近年日本で盛んに行われるようになりました。インターネットでも オリジナル柄で衣装等のオーダーを受けるお店も増えてきているようです。
(インクジェット・プリンターで 図柄を印刷して使用)
よさこい屋オーダー

優れた点としては下記があります。

  • 多色で自由な柄が作れる(工業生産のプリントは色数等の制限項目が多い)
  • 水等を使わずに 廃水も発生発生しないので 環境に優しい
  • 簡単な小規模な設備で 捺染(ナセン プリント)可能
  • 少量でも比較的低コストで生産できる

短所としては下記があります。

  • 中量以上では コスト高になる
  • 深みのある濃い色は出にくい(表層だけで捺染するため)

主流は ポリエステル繊維の昇華転写捺染(乾式転写捺染)と呼ばれる方法で、ポリエステルを染める分散染料が移行昇華しやすい欠点を 逆手に取った捺染方法です。
(昇華とは 固体から液体を経ずに いきなり気体に変化する現象です。反対に気体から いきなり固体になる場合も昇華と言います)

親水性の天然繊維では 熱を乾式ではなく蒸気を用いた湿式転写捺染をします。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

手捺染とは(テナセン) ハンド ハンドプリント(hand screen printing) ハンドスクリーン(hand screen printing)


手捺染とは、ハンドとかハンド・プリントとも言い(スクリーンを用いたものは ハンド・スクリーンとも言う)、型紙 スクリーン ブロックなどに模様を彫刻し、手工芸的に布生地に捺染する方法の事です。

大きく分けて下記の4種類があります。

  • 型紙捺染(カタガミナセン):美濃紙(ミノガミ)に生渋(ナマシブ)を張り重ね、漆(ウルシ)などを塗布します。これに模様を彫刻して布生地の上に載せて捺染します。
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  • スクリーン捺染:木製または金属製の枠に 篩絹(フルイギヌ 現在は絹製ではないと思います)を張った枠型を使います。篩絹の網目の模様以外の部分を膠(ニカワ)やラックなどでふさぎ捺染します。
    (シルク・スクリーンと同様の方法)
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  • 摺り捺染(スリナセン):刷毛(ハケ)を使って 型紙の上から染料をすり込みます。ぼかしを出すときに使います。
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  • 絞り染め(シボリゾメ):防染剤(ボウセンザイ)を施した糸で、下絵に従って固く絞り これを染めます。そうすると 絞られたところが染まらず模様になります。

少量生産の場合は 機械捺染よりスクリーン捺染のような手捺染の方が コストが安くなります。多くのハンド・プリント工場は112cm巾(シングル巾)の設備しか持っていない所が多く ダブル巾P下生地が一般的でない理由の一つです。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ソウコウとは(綜絖 heald ヘルド)


ソウコウとは(綜絖)、英語でヘルド(heald)と言い 織物織機で織るときに 経糸をつっておくものです。(下記写真の赤丸部分。この写真は アウベルクラフトさんより拝借してます)

ソウコウ(綜絖 ヘルド heald)

ソウコウ(綜絖 ヘルド heald)

アウベルクラフトさんは 上記手織り織機を14万円くらいで販売されてます)

大昔は 上記写真のように紐でできていましたが、鋼の針金→板状のヘルド(大別して2種類あり、板厚の薄いものと 厚いもの。厚いものは金属板を打ち抜いて作ります)と 進化してきてきました。

筬(オサ)に次いで 機屋(ハタヤ 織物製造業者 織布業者)の大切な道具です。織機の高速回転化に伴って 非常に速く消耗するようになりました。傷ができたり 曲がっていたりすると、経糸が切れたり 経筋(タテスジ)などの生地の欠点になります。

ジャガード織機では ソウコウは現在でも紐製で 福徳液などの強化液で強化して使います。ソウコウ自体をつっている外側の枠は ソウコウ枠(綜絖枠)と言います。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

オサとは(筬 reed)


オサとは()、下記写真のようなもので 織物を織るときに 経糸を通しておくものです。(2番目の写真。これらの写真は 日本竹筬技術保存研究会さんより 拝借してます)

筬の写真(上:金筬 下:竹筬)

筬の写真(上:金筬 下:竹筬)

筬の使われ方

筬の使われ方

大昔は竹筬を使用していたようですが、現在は工業生産する場合は金筬(カナオサ 金属製の筬)しかつかいません。
経編(タテアミ ニットの種類の1種)機の、導糸針を1列に並べて取り付けた板も 筬と言います)

昔は 金筬は機屋(ハタヤ 織物製造業者 織布業者)の財産と言われましたが(半永久的に使えた)、織機の高速回転化に伴って 消耗品となりました(筬が磨耗して傷がついたりして 使えなくなります)。

一つの羽(ハ 筬ではこの字を使います。英語でreed split/reed dent 通常鋼かステンレスです)の隙間に通常1~6本の経糸を通し、これによって織物の経糸密度がほぼ決まります。

(織縮み 染加工縮みなどで、筬密度x通し本数より実際の織物経密度は多くなります。「羽二重」は一つの隙間に2本糸を通す事から 名前がつきました。エアージェット・ルームでは 空気の拡散を少しでも防ぐために 突き出た窪みのある筬羽になってます)

この筬羽に傷がついたり 羽が曲がったりすると、経糸が切れたり 経筋(タテスジ)などの生地の欠点になります。

金筬は 金属製で上下(専門用語で「天地」と言いいます)が固定され 通常「鯨寸(クジラスン 約3.875cm)」間の羽数で密度を表わします。

織物の経緯(タテヨコ)の糸密度も 昔は鯨寸間の本数で表されていたようですが、海外規格のインチ(吋 inch 2.54cm)間の糸本数で 通常表わすようになりました。

金筬は 上下のバネで羽が挟まれており このバネの厚みとコイルの数で密度が決まります。このバネと羽を固定する方法には ハンダで固定する方法と樹脂で固定する方法があります。ハンダの方が耐久性があり 製造現場で傷んだ時に直しも効きますが、ハンダは製造時に熱をかけるために 精度が狂いやすい欠点があります。樹脂製のは現場直しが効きません。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。