月別アーカイブ: 2013年3月

色落ち


ここ2~3日 どうも手が黒ずむと思ったら、新品のコール天の黒ズボン(コットン100% 本当はポリエステル混の方が丈夫なのですが、ほとんど売ってないのですよね)が 原因でした。
(安かったからなあ~(笑)、でも 製品の質と縫製はしっかりしてたので・・・)

このズボンは 洗濯すると色落ちします。最初少なくとも一回は他の洗濯物と絶対に一緒に 洗ってはダメです。クリーニングに出してもダメです。他人の物に 色移りする可能性が あります。

ポリウレタン混の製品ですが、以前大クレームになった話を 聞いた事があります。最近は クレーム防止のために お客様ごとに個別洗いするそうですが)

デニム(ジーンズ)だと 色落ちすると言う事は広く知られていると思いますが、濃色のコットン(綿)製品も同じです。淡色は 使う染料が少なく また万が一色落ちしても、元々色が薄いので 問題ににならないだけです。

(ブランドの高級品だからと 安心しない方がいいです。色の鮮明さを優先して 染色堅牢度を犠牲にしている製品もあります。念のため 最初は別洗いしましょう)

よく見ると ポケットに入れておいたハンカチも 下着も、ほんの少しですが 黒ずんでます。コットン(綿)は、濃色(黒 紺 ごげ茶等)は染色堅牢度の高い反応染料で染めますが、中色(赤 緑 青等)の薄めの色や 淡色は直接染料(染コストが安いので)で染めます。

このコール天のズボンは 濃色なのに直接染料で染めたか、反応染料で 染めたのに 染め後洗いが十分でなかったか。コットンは 専門外なので よくわかりませんが。

関連:ポリウレタン高混率製品の色移りについて

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

芯地とは(シンジ interlining cloth) 接着芯地(セッチャクシンジ fusible interfacing)


芯地とは、布生地に張りを持たせ 服の型崩れを防ぎ、体型をカバーして 美しいシルエットを形作るためにあります。

布生地の種類と同じで 下記の3種類があります。それぞれの種類の中に、接着する芯地(接着芯地)と そうでない芯地がありますが、工業生産される縫製品で 非接着芯地が使われる事は ほとんどありません。

  1. 織物
  2. 不織布
  3. 編物

第二次世界大戦前は 接着芯地(熱と圧力を加える事によって 表地にくっつく)は ありませんでした。その頃は 芯地をつける「芯すえ作業」は 大変熟練と経験が必要だったそうです。

大戦後の労働力不足と 大量消費時代に対応するために、接着芯地が作られました。1964年には 接着剤をドット状に 定量・等間隔に配置する「ドット・タイプ」のものが 開発され、低コストで使い易い接着芯地が 大量に作られるようになり 広く普及しました。

主に使われる部分は、下記のサイトの 中頃のイラストが 分かり易かったです。
「芯地」について(東京都クリーニング生活衛生同業組合)

接着時の プレス圧力と温度を規定どおりにかけてないと、洗濯時に一部剥がれたりして シルエットや外観を著しく損なう事になります。

縫製作業をやりやすくするために 仮止めする「仮接着芯」と言うものも あります。

この記事は 生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

反毛とは(ハンモウ Shoddy) 再製毛(サイセイモウ)


反毛とは、元々 毛(ウール)織物や毛編物などの、くず糸やくず布を 反毛機でほぐし 再生した羊毛を指してました。(再製毛とも言います。新毛(virgin wool)よりも 紡績性や縮充性は劣ります)

ですが、近年では 綿(コットン)なども使われ、針状の機具で織りを崩すことによって毛羽立たせ、もとの綿または毛状の単繊維に戻したものも指します。糸くず、裁断くず、ぼろ布、古着などを反毛機・割糸機などで処理し、繊維素原料として 再利用されてます。

また ポリエステルナイロン100%の古着も反毛材料になります。(ただ 表地や裏地がポリエステル100%でも、副資材(レース等)等が他の種類の繊維ですと、ポリエステル100%の古着にはなりません。このあたりに 古着のリサイクルの難しさがあります)

フェルト芯地・内装材などに使われ、古くは、表紙原料にも混入利用されていました。反毛で出来た綿の大部分は、糸向け(作業手袋・作業着原料)、フェルト向け(自動車内装材・建築用断熱防音材)で、カーペット(住宅・事務所用)、縫いぐるみの中綿や運動用具その他のクッション材などにも使われてます。

産業革命以前は、布生地は貴重品で 何度も洋服に作りなおされて 使われてました。(着物などは ほどくと いくつかの長さの元の反物に戻り、また新規に着物が縫えます) その頃は ウールの布生地が 何度も作りなおされて、もうボロボロになってからも、まだ使おうと反毛機にかけられたのだと思います。

産業革命以降 糸を作ったり織物を織るスピードが飛躍的に上がって コストが大幅に下がり、布生地は 庶民でも普通に買える物になりました。
(江戸時代は 和紙に柿渋を塗って 寝具や着物下着の代用にしてしていたほどです。そのころ高かった紙よりも 高価だと言う事ですね)

この記事は 生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

色について カラー(color)


色って 本当に微妙で 難しいです。

よくお客様から、メールで画像のリンクを示されたり 画像を添付ファイルとして 送ってこられ、
「これと 同じ色を捜してください」 とか
「これに 一番近いカラーが欲しいのです」 とか 聞かれます。

ですが、お客様がご覧になられた色と 私が見ている色は 微妙に違っている事が 多いのです。元々 パソコンや液晶ディスプレイの機種ごとの癖が ある上に、パソコン出荷時に色がある程度調整されてますが、それから だんだんとずれて行きます。

(厳密にやる所は 2週間おきとか毎月のように カラー校正をやるそうです。

赤が青に見えることはありませんが、赤が微妙に青っぽくなったり 黄色っぽくなったりします。店長三浦のパソコンとディスプレイは、簡易カラー校正器で定期的に校正された色にしてます)

ですので、お答えするときに 上記の事情をお話して、
「厳密には お客様の思われている色と 違うかもしれませんが、私には これが一番近く思えます。」
と お答えしてます。

微妙な色合いの違いを 気になさる場合は、必ず品番(商品番号)と色番(カラーNo.)をメモされて、下記より無料サンプル請求される事を お奨めいたします。
無料サンプル請求

(よく紙のカタログや インターネットのお店で 「実際の色は 写真の色と多少異なる場合があります」って 書かれているのは、その為なのです。

昔 美術の先生に、美術の教科書に載っている絵は かなりお金をかけて 印刷の色調整をしていると 聞いた事があります。高価な自動車のカタログでさえ(商品が高いので、お金をかけられす筈なのですが)、説明には「写真の色とは 異なる事があります」って 書かれてますよね。

製造する時のロット(製造単位)が 違うと、色が微妙に違ってしまう場合もあります。
後から買いに行った布生地の色が 微妙に違う

また 実物の色の一部は、液晶画面で再現できないものもあります)

この記事は 生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

紡績とは (ボウセキ spinning)


紡績とは、天然繊維の短い繊維、または化学繊維ステープル(短繊維)を、平行に並べ 均一の太さに引き揃えて、撚(ヨリ ねじること)をかけて糸にすることです。「紡」は撚りあわせることを意味し、「績」は引き伸ばすことを意味する漢字です。

紡績で できた糸は、スパン・ヤーン(spun yarn)とか ステープル・ヤーン(staple yarn)と呼ばれます。

長繊維の絹を蚕の繭から繰り出し、ばらばらにならないように数本まとめて撚る工程は 製糸(silk reeling)と言います。化学繊維から糸を作る工程は 紡糸と言います。こうしてできた糸は フィラメント・ヤーン(filament yarn)と呼ばれます。
紡績も紡糸も 英語名は同じ “spinning” です)

原料繊維の種類によって 下記のような さまざまな種類があります。その製造方法や機械も 全部違います。

  • 綿糸:綿紡
  • 羊毛糸:毛紡
  • 麻糸:麻紡
  • スフ糸:スフ紡
  • 短繊維のスパン・ヤーン:合繊紡
    .
  • 絹紡糸(ケンボウシ):絹紡(くず繭等から作る)
  • 混紡(複数の種類の繊維原料を 混ぜ合わせて紡績する事。大抵は 綿とポリエステルのように 天然繊維と合成繊維を組み合わせる事が多い)
  • ガラ紡(落綿やくず綿から作る。生産スピードも遅く 均質な糸を作る事が難しいため、現在では ほとんど生産されてない)

太さの揃った 切れにくい(糸は一番弱いところから着れます)均質な糸を作るためには、確率統計理論(いろいろな長さの細かい繊維が 大量に寄り集まって糸になる為)が必要で 「紡績学原論」などと言う 大層な名前のついた学問もありました。

(昔の繊維技術者は 大層な名前をつける事が好きだったみたいで(昔は最先端の学問だったのでしょうね)、異種の合成繊維を 組み合わせて糸を作ること等を 「高次加工」(一次元の糸を 三次元加工する意味?)などと 言ったりしてました)

紡績糸(短繊維)で作った布生地は 一般に膨らみ感があります。また 表面に細かい毛羽が出ているので(この微細な毛羽の影響は絶大です) 柔らかく感じ、空気の層を保持するので保温性も高いです。

ただ 長繊維でも 仮撚加工をしたり、異種の長繊維を組み合わたりする新合繊等は、従来の長繊維ない特質を 表現する事が可能になってます。
(従来の長繊維織物は ペラッとした冷たい感じのものが 多かったです)

この記事は 生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

紡糸とは(ボウシ spinning) 溶融紡糸 湿式紡糸 乾式紡糸


紡糸とは、一般に化学繊維の製造段階で 糸の原液を多数の小さい穴から、押し出して糸にする事を言います。溶融紡糸 湿式紡糸 乾式紡糸など3種類あります。

(コットン(綿)やウール(毛) などの短繊維を、引き揃えて撚をかけて糸にする事は 紡績と言います)

  • 溶融紡糸(ヨウユウボウシ melt spinning)
    糸の原料を 熱で溶かして、多数の小さい穴から押し出し 冷やして固めます。
    ポリエステルナイロン等 多くの合成繊維で、この方法が取られてます。最も高速で エネルギーコストの低い紡糸方法です。
    .以前は 紡糸と延伸(引き伸ばして 分子鎖の方向を揃える)の2工程に分かれてましたが、最近は紡糸と延伸を1工程でやる one step spinning が主流になりつつあります。
    .
  • 湿式紡糸(シッシキボウシ wet spinning)
    原料を 溶剤に溶かして、凝固液(固める液)中に 多数の穴から押し出して、溶剤を除去して糸にします。レーヨン アクリル ビニロン等。
    .
    繊維を凝固させるのに 下記の2つの方法があります。

    1. 凝固液との化学反応で 凝固させる。レーヨン等
    2. 溶剤を取り去って 凝固させる。アクリル、ビニロン等

    .
    糸の断面は円形ではなく 凹凸の形の物が多いです。

  • 乾式紡糸(カンシキボウシ dry spinning)
    原料を 熱で気化する溶剤に溶かして、熱雰囲気中で 多数の穴から押し出し、溶剤を気化させて固めます。アセテート アクリル ビニロン等。
    .
    糸の断面は 繭形(マユガタ 楕円形)になります。

(2つ以上の製法に書かれている繊維は 製法が2つ以上あると言う事です。どちらが 主流かは わかりませんでした。ご存知の方が いらっしゃれば、御教授いただくと大変幸いです)

この記事は 生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

スパンボンドとは (spun-bounded fabric) メルトブロー(melt-blown)


スパンボンドとは、不織布の一種で 化学繊維を紡糸する際に 繊維が十分に固まらないうちに 直接シート状にして作ります。腰と張りのある不織布になります。

溶融紡糸(溶かして糸状にする)で作るものは メルトブロー(溶かして吹き付ける)と言います。下記の新和工業(株)さんの概念図が 大変わかりやすいです。ポリエステル(生産量一番多い)やナイロンなど熱可塑性の繊維は この方式で作ります。
メルトブロー概念図

キュプラなど 一部湿式紡糸(溶液中で紡糸する)によるものもあります。(キュプラ等は 熱で溶けないので)

埃が出にくいので 衛生用品や使い捨ておしぼりとして使われたり、繊維の密度や厚さで 通気性をコントロールしやすいので フィルターとしても 使われています。

この記事は 生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。