素材」カテゴリーアーカイブ

コーマ糸とは (combed yarn)


コーマ糸とは、短繊維カード糸に対する言葉で、カード工程(長さの短かい繊維の除去と 繊維を平行に引き揃える工程)の後で、さらにより短かい繊維の除去と繊維の平行度をより良くする為に コーマ(comb 櫛の意味)と言う機械を通して紡績したコットン(綿)の細番手高級糸の事です。

こうする事で 締まった糸になり(かすかな光沢も出ます)、中の繊維の平行度が増して糸の切断強度も上がります。30、40番手の糸には カード糸とコーマ糸の両方がありますが、それ以上の細番手はコーマ糸のみになります。カード糸では 短い繊維があったり 平行度が低いので 細い糸を作ると強度が出ないためです。(糸は一番弱い部分で切れます)

下記のように 外観が異なります。(写真は apparel fashion wiki より拝借しています。写真掲載ページ

コーマ糸の外観

コーマ糸の外観

カード糸の外観

カード糸の外観

中を構成する繊維長も 下記のグラフのようになります(綿花をほどいた繊維を縦にして 長さ順に横に並べています。縦軸が1本1本の繊維の長さです)。クラフは オリジナルTシャツのPMワークスと言う店の用語解説ページから 拝借しています)

ステープル・ダイヤグラム

超長綿と言うのは この1本1本の繊維長の平均の長い綿花を 糸にした物です。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ビニロンとは(vinylon)


ビニロンとは、ポリビニル・アルコールから作られた繊維です。コットン(綿)に似た風合いで、化学式はユニチカのページに載ってます。

合成繊維の中で 唯一吸湿性があり 強度や熱にも強い上にコストが安いために、当初はトレーニング・ウェアや学生服等 いろいろ使われました。ですが、染色しにくくゴワゴワすると言う問題があり 今は産業用に多く使われています。

現在、日本では クラレ(株) ユニチカ(株) (株)ニチビが生産しています。主な用途としては、ロープ 海苔網(吸湿性があるため) 石綿に代わるセメント板の補強材(強度と耐熱性) ゴムやプラスチックの補強材等があります。

耐熱性のあるビニロンに難燃性加工を施したものは、燃焼時の溶融落下物(メルトドリップ)がないので、安全作業服や消防用出動服などに使用されています。

ニチビの水溶性ビニロン(商品名:ソルブロン)は 水に溶ける繊維として知られています。溶かす事で その布生地の風合いを良くしたり、無撚糸のタオル(風合いがとても良い)に使われたり、毛羽の多い麻糸に巻いて 織物の経糸に使ったりします。

日本で世界最初に1939年に合成された繊維で、ナイロンに2年遅れましたが 世界で2番目に作られた合成繊維です。作られた経緯は Wikipediaに詳しく載ってます。

この樹脂は フィイルム状にすると 平面性が良く 光学特性もいいので、液晶ディスプレイの偏光板など、繊維以外の用途にも 多く使われています。液晶ディスプレイの偏光板のクラレの世界シェアは80%と言われています。

(クラレには シェアNo.1の商品が 数多くあります。大学院時代の恩師が 就職先として強く奨めてました)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

色が違って見える 演色性とは(color rendering property)


布生地の場合、色が違って見える時は 大きく次の2つの場合があります。

  1. 太陽光や蛍光灯など光源の違い(演色性 エンショクセイ)
  2. 染バッチが違う

2.の場合は 次を参照してください。
後から買いに行った布生地の色が微妙に違う

演色性とは、光源によって 同じ色でも微妙に違って見える事です。太陽光(自然光)の下で 同じ色に見えても、蛍光灯などの下では 違う色に見える現象です。弊生地屋は 自然光(北向きの窓)で 色合わせしてます。蛍光灯の下で 色合わせする会社も あるようです。

プロのアパレルの方でも、演色性のことをご存じなくて 「色が違う」と言う おしかりを受ける事が 稀にあります。演色性の事を 御説明してご納得いただきます。(弊店は北向き窓で 色合わせしてますと。自然光で色が合っていても、蛍光灯の光では 違ってみえる場合があります)

下記写真のように 同じ肉の写真でも 色が違って見えます。(写真は コニカミノルタさんのHPより拝借しています。演色性とは)

光源による演色性の違い

光源による演色性の違い

上の肉の写真、左が 演色性が一番高い(太陽光に一番近い)ので 一番美味しく自然に見えます。

  1. 左: 演色指数(Ra)の一番高い(Ra91)D50と言う蛍光灯
  2. 中: 昼白色蛍光灯(Ra79)
  3. 右: LED(Ra68)

(現在販売されているLEDは 技術が進んで もっと演色性は上がってます。Ra85程度とか、実際 昼白色の蛍光灯よりも 自然に見えます)

白熱電球は 演色指数が一番高く(ほとんどRa100 照度は暗いですが)、また 赤味に見えるので(赤黄色の暖色は 食欲をそそります。マックの看板が 赤と黄色なのは そのためです) レストラン等では 白熱電球を使う場合が多いです。

下記が太陽光のグラフです。縦軸は 上のグラフと同じように 相対値になってます。(グラフは 1.023world – ヤドカリパークとマリンアクアリウムさんの ブログより拝借してます)

太陽光(自然光)のスペクトル

太陽光(自然光)のスペクトル

太陽光の計算上のスペクトル

このグラフの形(スペクトル)と 蛍光灯やLEDのグラフの形の違いが 演色性の原因の一つです。LEDのスペクトルが 一番太陽光に近いのですが、480nm(ナノメートル)辺りの 相対値が 低すぎるためか、自然光からは程遠い色の見え方になってます。

他にも 人の目が感じる色の強さが 色によって違うのも要因の一つです。下記グラフのように 明るい所(点線のグラフ)では550nm辺りの緑色が最も強く感じます。(暗い所(実線のグラフ)では 500nm辺りの空色です。写真は シャープさんのHPより拝借しています)

暗い時と明るい時の比視感度

暗い時と明るい時の比視感度

暗い時と明るい時の比視感度

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

シレジアとは(silesia) スレーキ(sleek) スレキ


シレジアとは、スレーキ スレキ(英語のスペルからは スレーキの方が正しいと思われますが)とも言われ、元々コットン(綿)の比較的密に織られたツイル(綾)織物で、服の裏地等に使われます。

一般に無地織物ですが、格子(チェック)などに 染められた物もあります。強い光沢仕上げをされて(合繊などと比べると あまり光りませんが) 滑りがよくなってます。

ジーンズ用語では スレーキはフロント・ポケットの袋地を指します。綿の平織または綾織で 厚く糊付けして弱いですが光沢を出してます。

ドイツのシレジア地方で最初に織られた事から シレジア(silesia)と言われるそうです。

スレーキの語源は 滑らかなという意味のスリーク(sleek)にあると言われています。合繊でも ズボンの裏地用途などに ウーリー加工糸平織りに織った織物も スレーキと呼ばれます。

また別にメリノ羊毛や メリノ羊毛を使った織物を シレジアと言う事もあります。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

よろけ織とは オンジュレー(仏 ondule eは上に点がつきます)


よろけ織とは、オンジュレーとも言い、

  1. 特殊な筬(オサ)を使って 経糸を波状にしたもの
  2. 緯糸を波状にしたもの

で、波型の地模様が現れます。非常に珍しい織物(私も写真でしか 見たことがありません。通常は 経糸緯糸共 直線です)で、一般に平織が多いそうです。

下記が経糸をよろけさせた織物の例です。わかりにくいですが、経糸が波状になっている部分があります。
(写真は nunotech研究所様より 拝借しています)

経よろけ織(たてよろけ)

経よろけ織(たてよろけ)

経よろけ織(たてよろけ)

下記が緯糸をよろけさせた織物の例です。特殊な方法でやっているようですが、緯よろけ織の布生地としては このようなものだと 思われます。
(写真は 小林繊維株式会社様より拝借しています)

緯糸よろけ織(よこよろけ)

緯糸よろけ織(よこよろけ)

緯よろけ織(よこよろけ)

オンジュレーとは フランス語で「波形」の意味だそうです。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

異型断面とは(イケイダンメン)


異型断面とは、糸では下記の写真のように シルク(絹)を真似て 合成繊維再生繊維で 糸の断面を丸でない断面にした繊維の総称です。
(下記写真は 丸安毛糸株式会社様より 拝借しています)

異型断面の例(左:シルク 右:レーヨン)

異型断面の例(左:シルク 右:レーヨン)

異型断面の例

丸でない形にする事によって(通常の合成繊維や再生繊維は 丸断面です)、下記のような特性が出てきます。

  • 絹のような光沢が出る(絹独特の光沢は 上記写真のような 不完全ながら三角形になっている為)
  • 合繊独特のぬめり感が軽減して ドライなタッチになる
  • 糸の表面に 上記右写真のように縦の溝をつけて、毛細管現象で水分を排出しやすくなる(速乾の布生地の中には これを利用しているものもある)

三又のような三角(例:東レシルック等 単に「異型断面」と言うと この三又のような三角断面を指すことが多いです)  星型 五角形等、いろいろな種類があります。最近は 下記写真のような精密な断面の糸も 作られるようになったみたいです。
テイジンさんのホームページより 拝借)

精密な形の異型断面

精密な形の異型断面

テイジンタコ足断面の軽量・多機能繊維

下記が 弊生地屋取り扱いの 異型断面繊維の布生地です。画像やリンク・クリックで 詳細がご覧になれます。

シワになりにくいサテン・クレープ

シワになりにくいサテン・クレープ

サテン・クレープ:MB8410

金属光沢の綺麗なシャンブレー・サテン

金属光沢のシャンブレー・サテン

シャンブレー・サテン:MB8400

手触りの良いシルデュー・デシン

手触りの良いシルデュー・デシン

手触りの良いシルデュー・デシン:MB2000

綺麗なシャンブレー・シワヘリンボン

綺麗なシャンブレー・シワヘリンボン

シャンブレー・シワ・ヘリンボン:MM1333

玉虫の綺麗なシャンブレー楊柳

玉虫の綺麗なシャンブレー楊柳

シャンブレー楊柳:MB9000

2色の濃淡が綺麗なシャンブレー・シフォンジョーゼット

2色の濃淡が綺麗なシャンブレー・シフォンジョーゼット

シャンブレー・シフォン・ジョーゼット:MB7506

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

移行昇華とは


移行昇華とは、布生地にコーティングされたポリウレタンやゴム引きのゴムに 色が昇華して移ってしまう現象です。ポリエステル繊維を染めるのに使う分散染料は この現象が起こりやすいです。

(昇華とは、固体から気体へ 気体から固体へと言うように、液体の状態を経ずに 変わる事をいいます。この場合は 布生地から昇華した染料成分が、ポリウレタンやゴムの中で 昇華して固体へ変わり、色が見えます)

移行昇華が起こると、プリントの柄が ポリウレタン・コーティングに移って プリント柄が2重に見えたりします。染生地とポリウレタンやゴム素材に縫い合わせ等で 密着している部分で 起こる事もあります。

いろいろな移行昇華防止の加工方法が 行われてます。また カチオン可染のポリエステルを用いて カチオン染料のみで染めると この現象は起こりません。
(カチオン可染布生地を使っていても 色によって分散染料で染めている場合もありますので 注意が必要です)

移行昇華を完全に防ぐには 酸性染料で染まるナイロン等を用いれば良いです。コーティングやラミネート布生地で 防寒着やスポーツ用素材 バック用素材等に ナイロンが使われる理由の一つになってます。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ダブル幅とは(W幅) シングル幅 ダブル巾 W巾 シングル巾 S巾


ダブル幅とは(W巾)、合繊織物の場合、現在では布幅140cm幅以上のものを言います。それ未満をシングル幅(S巾)と言いますが、112cm幅のものが多いです。

ただ 繊維(素材)がちがうと 呼び方も変わるようです。コットン(綿)ではシングル幅は92cm(ヤード幅 ヤール幅とも言います。1ヤード=91.44cm)のようです。ウール(毛)では ほとんど150cm幅以上のようです。
(ですので「ダブル幅とは」で検索すると いろいろな幅の答えが出てきます)

手芸店では 布生地を置く棚の長さの関係もあり、90cm幅の布生地が置かれている事が多いようです。

シングル幅では 身頃と袖や他のパーツを別々の長さで取らなければ ならない事が多く、用尺が余分に必要になります。ですが、ダブル幅では 身頃の長さの中で袖や他のパーツを取ることができて、取り効率が良くなります。

用尺が短くて済むのと(メータ単価は倍にはならない)、最近は体格が良くなってきていて 大きなサイズはシングル幅では 取りづらい場合もあるので、プロのアパレルさんは ダブル幅の指定が多いです。

ただプリント下(P下)は、プリント工場の設備がダブル幅に対応してない工場も多く シングル幅の布生地が主体になります。

幅はあくまでも公称で、その幅までパターンが取れますよ(端には いろいろな歪が残っているので 実際にギリギリまで取る場合は あまりありません)と言う意味です。実際には公称幅以上ある事が多いです。(数センチですが)

倍の長さでないのに ダブル幅と言うのは、いろいろ調べましたが よくわかりませんでした。身頃の長さの中で 袖等他のパーツも取れるので ダブル幅と言うのかも知れません。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

手捺染とは(テナセン) ハンド ハンドプリント(hand screen printing) ハンドスクリーン(hand screen printing)


手捺染とは、ハンドとかハンド・プリントとも言い(スクリーンを用いたものは ハンド・スクリーンとも言う)、型紙 スクリーン ブロックなどに模様を彫刻し、手工芸的に布生地に捺染する方法の事です。

大きく分けて下記の4種類があります。

  • 型紙捺染(カタガミナセン):美濃紙(ミノガミ)に生渋(ナマシブ)を張り重ね、漆(ウルシ)などを塗布します。これに模様を彫刻して布生地の上に載せて捺染します。
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  • スクリーン捺染:木製または金属製の枠に 篩絹(フルイギヌ 現在は絹製ではないと思います)を張った枠型を使います。篩絹の網目の模様以外の部分を膠(ニカワ)やラックなどでふさぎ捺染します。
    (シルク・スクリーンと同様の方法)
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  • 摺り捺染(スリナセン):刷毛(ハケ)を使って 型紙の上から染料をすり込みます。ぼかしを出すときに使います。
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  • 絞り染め(シボリゾメ):防染剤(ボウセンザイ)を施した糸で、下絵に従って固く絞り これを染めます。そうすると 絞られたところが染まらず模様になります。

少量生産の場合は 機械捺染よりスクリーン捺染のような手捺染の方が コストが安くなります。多くのハンド・プリント工場は112cm巾(シングル巾)の設備しか持っていない所が多く ダブル巾P下生地が一般的でない理由の一つです。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

セルロースとは(cellulose)


セルロースとは、コットン(綿) 麻やレーヨン ベンベルグ アセテート等の主成分で、植物のほとんどは この成分よりできてます(植物細胞の細胞壁の主成分、全植物成分の1/3を占めると言われてます)。自然界に最も多く存在する炭水化物(有機化合物)です。

(化学式や物性等の詳細は 次をクリックしてください。 セルロース )

水や熱水に溶けず 人間は消化する事ができません。(草食動物は消化できます) 第五の栄養素と言われる 繊維素はセルロースからできています。

セルロースは、1838年フランスのパヤン(Anselme Payen, 1795‐1871)によって、高等植物の細胞(セル)壁を構造する糖の意味で名づけられました。1844年 マーセル(John Mercer, 1791‐1866)はセルロースとアルカリの反応(マーセライズ加工 マーセリゼーション)を研究し、工業的利用への道を開きました。

めがね枠のセルや セルロイド製に人形は、セルロース化合物で 硝酸セルロースです。(非常に燃えやすいので 現在では あまり使われてません)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。