投稿者「kijiya」のアーカイブ

シャンタン (shantung) サテン・シャンタン


シャンタンとは もともと絹(シルク)織物で、経糸に生糸(キイト) 緯糸に玉糸(不良まゆから製糸した節(フシ)のある生糸)を使って、緯方向に節が不規則に現れた平織織物です。

サテン(朱子)織組織に織ったものを サテン・シャンタンと言います。

現在は 絹製のものは ほとんど見ることはなく、合成繊維製のものが多いです。1本のフィラメント糸に もう1本のフィラメント糸を不規則に巻きつけて節にしたものや、紡績糸のスラブ・ヤーンを使って節を表現してます。

シャンタンの名称は 中国のシャントン(山東)省から来ています。

大変申しわけございませんが、弊生地屋での取り扱いはないです。

この記事は サテン生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

新合繊(シンゴウセン)


新合繊とは 30年ほど前に、東洋紡(株)が1987年に開発したジーナを最初に 今までの合成繊維(合繊)になかった新しい質感の糸が次々と開発され 一世を風靡しました。それから新々合繊とか いろいろ開発されましたが、新合繊ほどのインパクトはなかったようです。

新合繊は大きく分けると 下記のような質感で4つに分類されました。

  1. ニューシルキー:絹を超越した光沢 きしみ感(絹鳴り)
  2. ピーチスキン:桃の皮のような薄起毛 パウダータッチ
  3. レーヨンタイプ:落ち感(ドレープ) ドライタッチ ソフトタッチ
  4. ニュー梳毛調:従来のポリエステルにないソフト感 ウォーム感

異収縮混繊糸と言って 縮み方の違う糸を組み合わせる技術(エアー混繊糸や複合仮撚等)を中心に、上記のようないろいろな種類の 糸を作ってきました。例えば 固い縮み率の多い糸と 柔らかい縮み率の少ない糸を複合すると、染め加工後にコシがあるのに 手触りは柔らかい布生地が出来上がります。

(柔らかい糸のみで 作りますと、手触りはいいのにコシのない布生地になってしまいます。固い糸は縮み率が大きいので 糸の表面に出にくくなってます)

弊生地屋のシルデュー・デシンは 1.のニューシルキー・タイプの布生地で、絹を超越した手触りです。

絹を超越した手触りのシルデュー・デシン

シルデュー・デシン:MB2000

この記事は サテン生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

人絹(ジンケン)


人絹とは、人造絹糸(ジンゾウケンシ)の略で ビスコース・レーヨン長繊維の事です。絹糸に似た外観の繊維を人造的に作ったものの総称ですが、レーヨンの長繊維以外を 人絹と呼ぶことはないようです。

レーヨンは再生繊維の1つで 通常ビスコース法で作られてます(ビスコース・レーヨン)。現在はレーヨンの長繊維も短繊維も レーヨンと呼ばれ「人絹」と言う名称は 使われてません。レーヨンは綺麗な色に染まりますが、水に弱く 水洗いすると縮みます。

福井県は昔は、レーヨン織物の生産が盛んで 「人絹王国」とも呼ばれてました。もう 取り壊されてしまいましたが、その頃珍しかった洋風コンクリート建物の「人絹会館」と言う 立派な建物もあり、会合や祝典や結婚式等に よく利用されてました。

この記事は サテン生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

羽二重(ハブタエ) habutae silk


織物を織るときに使用する 筬(オサ)の羽に経糸を2本通して折ることから 「羽二重」と呼ばれます。日本を代表する絹織物であり『のよさは羽二重に始まり羽二重に終わる』といわれてました。

元は絹織物で作られていて 戦前は、密度の込んだ重めの羽二重は 着物用布生地(着尺)として主に内地用に、軽め(8匁(モンメ)等)の羽二重は  スカーフやブラウス用として 海外へ大量に輸出されてました。ですが 現在国内では ほとんど見かける事がありませんし、輸出もほとんどされてません。

英語でも”habutae silk”と ローマ字で書かれるほど 有名だったのですね。でも 辞書には載ってませんでした。ポリエステルでも 代用品として「羽二重」と言う商品名で作られてます。

平織がメインですが、ドビーで織る羽二重(アヤハブタエ)や朱子羽二重(シュスハブタエ)、ジャガードで織る紋羽二重(モンハブタエ)なども あったそうです。

余談ですが、福井県の銘菓「羽二重餅」は この絹羽二重のような繊細で柔らかいタッチを 表現してます。

この記事は サテン生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

モスリン(muslin) 毛斯綸 モス メリンス 唐縮緬(トウチリメン)


モスリンとは 日本ではウール(毛)などの単糸平織した薄地の織物の事を指します。略してモスとか、別名メリンス 唐縮緬(トウチリメン)とも呼ばれるようです。漢字の当て字は「毛斯綸」のようです。

アクリルで作られると アクリル・モス(アクリル・モスリン)、ウール(毛)で作られると 本モスリン、コットン(綿)で作られると 綿モスリンと区別する場合もありますが、日本では アクリルとウール以外 あまり見かけないようです。

シルク・シフォンは 別名シルク(絹)モスリンとされる事もあるようです。薄地の生地をモスリンと言うのですね。

(天然繊維は 太さのバラツキがあり、かつ単糸では弱いところが切れやすい為に 2本合わせて双糸にする場合も多いです。厚めの布生地で表面の綺麗なコットン・シャツ生地などは 双糸で織られている場合が多いです)

モスリンの名前は、メソポタミアのチグリス河西岸の都市モスールで 綿モスリンが最初に作られた事に由来してます。綿モスリンは日本では ほとんど輸入もされませんでしたし、作られもしなかったようです。

この記事は サテン生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ポリアミド繊維 (polyamide fiber)


ポリアミド繊維(polyamide fiber)とは アミド結合によって多くの分子が結合してできた繊維の総称です。

分子鎖骨格に脂肪族(aliphatic)を含むものの代表的なものに ナイロンがあります。また 分子骨格に芳香族(aromatic)のみを含むものは アラミド繊維(aramid fiber)と総称されます。

ナイロンは非常に綺麗な色に染まるのに対して、アラミド繊維は 結晶性が高いために染まりにくいです。

ポリアミドは 繊維だけでなく、いろいろなエンジニアリング・プラスチックとして使われてます。

この記事は サテン生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

アラミド繊維 (aramid fiber)


アラミド繊維とは ケブラー東レ・デュポン(株))やコーネックステイジン(株))等の商品名で販売されている、高強度・高耐熱性繊維です。(強度はケブラーの方が 耐熱性はコーネックスの方がやや優れてます)

ナイロンやアラミド繊維を総称して ポリアミド(polyamide)系繊維といいます。ナイロンは 分子鎖の中に ベンゼン環(亀の子)のない脂肪族(aliphatic)ポリアミド繊維であるのに対して、アラミド繊維は 分子鎖の中にペンゼン環がある芳香族(aromatic いい匂いがする物質が多いので芳香族と言いますが、全ていい匂いがするわけではありません)ポリアミド繊維です。

(アラミド繊維は 分子鎖の中が全てベンゼン環です)

aromaticと amideを組み合わせて、aramidと名づけられたと思います。ケブラーは 防弾チョッキや防刃手袋 自転車等のタイヤコード等に多く用いられてます。高強度ですが ハサミで切ると切れにくいですが切れます。

ナイロンが非常に綺麗な色に染まるのに対して、アラミド繊維は 結晶性が高いので染まりにくいです。

ケブラーはパラ系アラミド繊維 コーネックスはメタ系アラミド繊維で、ベンゼン環の付く位置が横に1つずれているだけなのですが、パラ系は強度が メタ系は耐熱性が やや優れていると言う性質の違いが出ます。

余談ですが、わたしの卒業論文はケブラーで 他大学院の試験を受けたときに
「ポリアミド系繊維の物性等について述べなさい」

と言う問題も出て たぶん出題者はナイロンについて 書くことを期待してたと思いますが、
わたしは 当然アラミド繊維のケブラーについて 書きました。卒業論文でやっていので 自分で言うのも何ですが、いい答案が書けたと思います。わたしが この大学院に受かった要因の1つだと思ってます。

この記事は サテン生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ピリングとは (pilling)


ピリングとは 毛玉や糸の飛び出しの事です。合成繊維やニットはなりやすいです。天然繊維もなりますが、強度が弱いので 擦り切れて落ち易いので あまり目立ちません。

ピリングは 引きちぎるより、はさみや市販の毛玉取り機でカットされた方がいいです。この時に くれぐれも布生地を切らないように注意してくださいませ。わたしは これで洋服や靴下等を何着か穴をあけてしまいました。また やりすぎると布生地の膨らみ感が減ってしまいます。

余談ですが、ピルは”pill”と書いて 動詞の意味に「毛玉にする」と言う意味があります。また 避妊薬のピルも同じスペルで 名詞は「丸薬、カプセル」や「経口避妊薬」の意味が、動詞では「・・・に丸薬を飲ませる、・・・を丸薬にする」と 言う意味があります。

参考:抗ピル加工

この記事は サテン生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

抗ピル加工 抗ピリング加工


抗ピル加工ピリング加工)とは、合成繊維等に発生し易い毛玉のような 糸が飛び出したもの(ピリングと言います)を 発生しにくくする加工です。

ピリングは 繊維の強度が強いのと繊維同士が滑り易いと 起こり易いです。ですので、

  • 薬品で処理をして 繊維の強度を落とす。(衣服等に要求される 引裂き強度はクリアする程度にです)
  • アクリル酸エステル系の薬品を付けて 繊維同士の摩擦係数を上げる

などの 加工方法が取られます。織物よりは ニット(編物)の方がなりやすいです。

ウール(毛)100%のセーターなどは 繊維の強度が弱いために ピリングや毛玉は発生しにくいですが、アクリル等の合成繊維等が混じったものは ピリングや毛玉が発生し易いです。市販の毛玉取り機等で綺麗にする事ができます。引きちぎったりするよりは 毛玉取り機やはさみ等でカットする方がいいと思います。

(この時 くれぐれも布生地を切らないように。わたしは 何度か切ってしまって 洋服や靴下等をダメにしてます(涙)。また やりすぎると布生地の膨らみ感が減ってしまいます)

余談ですが ウール100%のものは 非常に虫に食われ易いです(上等ないいものほど 美味しいのか食われますね)が、混ざっていると食われにくいです。

この記事は サテン生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

二重織とは 2重織 (ニジュウオリ)


二重織2重織)とは 織物の織組織で、織組織が二重になっているものです。これによって 例えば 2種類の糸を裏と表どちらかに 沢山出すことが可能になったり、肉厚の布生地を作れたりします。

  1. 経二重織(経糸が二重になってます)
  2. 緯二重織(緯糸が二重になってます)
  3. 経緯二重織(経糸と緯糸が両方二重になってます。断面を横から見ると 2枚の布生地に見えます。上と下をつなぐ結節点で 数ミリ間隔でつながっています。結節点の数が多いと 固く締まった織物に、少ないと柔らかい膨らみのある織物になる傾向です)

大きく分けると 上記の3種類があります。1.が一番生産性が高く、3.が織組織的に一番肉厚の織物を作ることが可能です。下記が経緯二重織織物の例です。

二重織ジョーゼット(中肉)

中肉二重織ジョーゼット

中肉二重織ジョーゼット

遮光カーテンは 二重織の代表的な例で、表裏サテン織組織で 中に原着の黒い糸(糸の段階で黒く染められている)が 入っています。ですので 光を遮る性能が高いのです。

余談ですが、アメリカの防弾チョッキは 8重織になっているそうです。ナイロンからもっと強度の強いケブラー(わたしの卒論はケブラーでした)と言うアラミド繊維になり ボディガードなどで死亡する人が減ったそうです。(防弾チョッキでも 至近距離から撃たれたりすると 貫通するそうです。日本にいて良かったですね!)

この記事は 布生地生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。