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パーマネント・プレス加工(permanent press) 耐久加工(durable press) パーマネント・プリーツ


パーマネント・プレス加工とは、コットン(綿)  レーヨンなどの布生地に 樹脂加工(樹脂をつける)をして 高温で処理し、半永久的なプレスを施した加工方法です。略してPP加工とも言います。

(樹脂は熱可塑性(熱をかけると 柔らかくなる)のものを用います。元々 ポリエステルナイロンなどの合成繊維は、熱可塑性なので 樹脂加工しなくても パーマネント・プレス加工は可能です。

キュプラレーヨンなどの 再生繊維は 熱可塑性でなないので、パーマネント・プレス加工をするためには コットンなどと同様に 樹脂加工が必要です)

この加工をすると、下記のような特徴が現れます。

  1. 洗濯後 ノーアイロンで着れます。
  2. プリーツのひだが消えにくい。(パーマネント・プリーツ
  3. 型崩れしにくく シワができにくい。

樹脂をつけるために どうしても元々も風合いは多少損なわれます。アメリカでは DP加工(durable press  耐久加工)と言われています。

生地の分子同士を 架橋反応でつなぐ、形態安定加工とは 違います。

(余談ですが、熱可塑性の反対は 熱硬化性と言います。熱をかけると固くなり、フェノール樹脂エポキシ樹脂等がそうです。炭素繊維やガラス繊維などで作られた 繊維強化プラスチック(FRP  Fiber Reinforced Plastics)は 熱硬化性樹脂が用いられてます。
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最近では 量産性を考慮して(射出成型等が可能になる) 熱可塑性樹脂を用いたカーボン・ファイバー強化プラスチック(CFRP  Carbon Fiber Reinforced Plastics)の量産化試験も始まっているようです。
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現在 一般にカーボン素材と言うと 熱硬化性樹脂を用いたものがほとんどです)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。大変申しわけございませんが、弊店では パーマネント・プレス加工は やっておりません。

形状記憶の布(生地)とは メモリ織物


形状記憶の布(生地)とは、変形させた形が そのまま残る布生地の事を言います。メモリ織物とも呼ばれてます。
(形状記憶合金とは ちょっと違います。形状記憶合金は 常温で変形させても、お湯などをかけて熱すれば 元の形に戻ります。また ワイシャツなどの形態安定とも ちょっと違うと思います) 2種類あって、

  1. 先染めの無撚糸(撚のかかってない)の糸を 経緯(タテヨコ)とも 高密度に織り上げ、ひずみを取る程度の整理しかしない布生地。(染加工して 高温にさらすと、通常の布になってしまう)
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  2. 緯糸(ヨコイト)等に 数本に一本くらい ステンレス(金属)の糸を入れた布生地。

1.は かなり使われているようで、「メモリ織物」等でインターネット検索すると 沢山でてきます。
2.は やや特殊用途になり、変形させた形を保つ力は強いのですが、金属が入っているためか 1.ほどは広く使われてないようです。

1.も2.も 特殊な布生地になり 一般にはあまり売られてないようです。弊生地屋の取り扱いもありません。

(余談ですが、形状記憶合金は 高級なブラジャーのカップのワイヤーに使われているそうです。通常の金属を使うと 洗濯などで変形して 都合が悪いですが、体温で元の形にもどるので いいのだそうです。

形状記憶合金って 20年くらい前に非常に注目されたのですが、形状を記憶させるコストが どうしても安くならずに 結局当初言われたほどには広く普及しませんでした。プラスチックでも 形状記憶プラスチックなんてのも 作られたのですが・・・)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

形態安定の衣料品 SSP加工 VP加工


形態安定の衣料品では 形態安定のワイシャツが有名です。洗濯後 干しておくだけでシワが伸び アイロン不要と 一世を風靡しました。

(形態安定の衣料品と 形状記憶の布生地メモリ織物とは 違うと思います)

当初はT/C(T/C  ポリエステル/コットン)の比率 50:50の製品しか ありませんでしたが、技術開発が進み コットン100%のものも 出来るようになりました。
(ただ コットン100%のもは 多少シワがより易いようです)

後述するように 分子同士を架橋反応(橋を架けて つなぐ)させるので、出来上がった製品の風合いが どうしても堅くなってしまう(衿やカウスも堅い)と言う欠点もあります。
(洗濯をされる奥様方は 好まれますが、実際に着用する男性は 好まない人もいらっしゃいます)

洗濯の仕方とかは 下記のサイトに詳しく書いてあります。
形態安定加工シャツの正しい洗濯術

SSP加工(布地を液体アンモニアと樹脂で 加工してから縫製し、高温で熱処理する)とVP加工(縫製後にホルマリンガスを噴きつけて繊維内に浸透させる)が代表的です。いずれも コットンのセルロース内の 分子同士の架橋反応をさせて 形態を安定させます。ですので セルロースが主成分のレーヨンなどの製品も 形態安定する事は可能です)

加工の良し悪しで シワのより易さが決まるので、メーカー間の差が大きいと言われています。また 縫製のちょっとした不備も 形態安定で残ってしまうので 高い縫製技術が求められるととも言われています。

樹脂をつけて その樹脂の力で、ノーアイロンとするパーマネント・プレス加工とは 違います。

形態安定の布生地は 通常売っていません。(通常の布生地に 上記のような一貫加工をするため)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

バリスティック ナイロンとは(Ballistic Nylon)


バリスティック ナイロンとは、デュポンが軍用に開発した 通常のナイロンの5倍の強度を持つと言われている繊維です。耐摩耗性にも優れていて カバンやシステム手帳 時計のバンド等に広く使われています。

この繊維自体が 弾丸を防ぐように誤解されているようですが、初期の頃は 鋼やチタン セラミック ポリエチレンなどの組み合わせた板(多少はバリスティック・ナイロンの力もあるでしょうが、実際には これらが弾丸を防ぎます)を、バリスティック・ナイロン素材で包んでいたようです。ですので、かなり分厚く硬く重かったようです。

(サイトによっては ”Vallistic Nylon”と 記載されていますが、Vallisticは英和辞典を引いても 単語がなく間違いだと 思われます(まあ 仏語等の他の言語かもしれませんが・・・)。Ballisticは「弾道(学)の」の意味が 出てきます)

現在は デュポンのアラミド繊維 ケブラー(Kevlar)を用いた防弾チョッキ(八重織と言われてます)が開発され、薄くて柔らかく軽い防弾チョッキができてます。スーツの下にも違和感なく(多少はあるでしょうが)着用できるので、これで命が助かった ボディガードやシークレット・サービスの方達が 沢山いらっしゃるようです。

大変申しわけございませんが、弊生地屋での取り扱いは ございません。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ヤング率とは(Youngs modulus) 弾性率(ダンセイリツ)


ヤング率とは、初期引っ張り抵抗度です。最初引っ張る力に比例して伸び、力を緩めると 元の長さにバネのように戻ります(弾性変形 ダンセイヘンケイ)。ですが ある力の限界を超えると もう元の長さには 戻りません(塑性変形 ソセイヘンケイ)。この限界まで伸ばした時(弾性変形内)の抵抗率(「力/伸び」の比)を ヤング率とか弾性率見かけヤング率などと言います。

大きいほど 堅いコシのある繊維と言う事になり、この値の大きいコットン(綿)や ポリエステルはコシや張りのある布生地になりますが、引裂き強度は弱くなります(もろい)。この値の低いナイロンなどは コシのないダラリとした感じになりますが、引裂き強度は増します。

(ナイロンがパラシュートに使われたり、アラミド繊維(ケブラー等)登場前の防弾チョッキ(バリスティック・ナイロン)などに使われたのは、強度もさることながら その強い引裂き強度の為です。強度的には ポリエステルの方が強いです)

ナイロンは結晶化度が ポリエステルに比べて低いので 低ヤング率となります。「ヤング」と言う名称は トマス・ヤング(Thomas Young)に由来します。

皆さんには あまり馴染みはないかも知れませんが、大変重要な物性値の1つで 繊維の物性表には必ず載っています。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ジュートとは(jute) 黄麻とは(コウマ)


ジュートとは、黄麻(コウマ)とも言い シナノキ科に属する植物の靭皮部分(ジンピブブン 外皮のすぐ内側にある柔らかな部分)からとった繊維で、の一種です。

耐水性には乏しいのですが、強度や光沢があり 紡績もしやすいので大量生産できます。用途は梱包袋 リノリューム(建材の一種で床材などに使われる)の基布 カーペット ベルト バックなどです。

衣料用には ほとんど使われません。主産地はインドやバングラディシュ等です。

ジュート生産の過程で出る廃棄物の処理が環境にかけるコストは少なく、またジュート製品自体の生物分解性が高いことから、近年は環境への負荷が少ない素材としても注目されています。新しいうちは かなりニオイがしますが、使用するにしたがって 徐々に薄れていきます。

下記のお店のように フェアトレードとして ジュートバック等が、バングラディシュやネパール等から輸入されいて 現地の学校が作られる一助になったりしてます。
Ajee(アジー)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

テンセルとは(Tencel) リヨセルとは(Lyocell)


テンセルとは、レーヨンなどと同じように 木材パルプから作られますが、製法が違うので下記の様な特徴があります。
(当初イギリスのコートルズ社が生産していましたが、オーストリアのレンチング社が買収し
リヨセルを商標として販売しています。ですので 同じものです)

  • レーヨンよりも強度が強く 縮みにくい
  • レーヨンよりも製造する時の 環境負荷が低い
  • 布生地の表面が微起毛している

ただ 表面が毛羽立ち易い(フィブリル化 分子鎖の配列性が高いためらしいです)欠点があります。できるだけ摩擦は避け、洗濯は短時間でやられる事をお奨めいたします。

(レーヨンなどは パルプを誘導体を作って化学的に分解するために 同じセルロースでてきている綿よりも 強度が低下します。テンセルは精製するだけなので 上記のような特性があるそうです)

当初は 固くてごわごわした布生地しかできず、デニム・パンツやダンガリー・シャツなどが作られてましたが、あまり売れなかったようです。

その後日本では 大森企画と言う会社が、染加工時に 「もみ処理」や「たたき処理」(布生地表面を毛羽立せる、フィブリル化)、「バイオ加工」(微生物に繊維表面を食べさせて ポリエステルの減量加工にように 風合いを柔らかくした)などの加工を施して、絹のような柔らかい風合いドレープ性を付与しました。

その当時 大変爆発的に売れて 一世を風靡しましたが、その大森企画と言う会社も 今はありません。

ポリエステルとかキュプラ、レーヨンのような分類上は それらの分類には属さず
「指定外繊維」となります。 表示例: 指定外繊維(リヨセル) 100%

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

ラミーとは(ramie) 苧麻とは(チョマ)


ラミーとは、日本古来の(カラムシ)や 海外ではイラクサ科の植物ラミー靭皮部分(ジンピブブン 外皮のすぐ内側にある柔らかな部分)から 作られた繊維です。苧麻(チョマ)とも呼ばれ、両者は植物学上では 別々ですが、性質が極めて似ているので 繊維業界では 同義語とされてます。

亜麻と共に 衣料用に使われ、の一種です。

亜麻(リネン)に比べて 一層ハリがあり 肌にべとづかず、麻絹(アサキヌ)と呼ばれるように上品な光沢があります。白度に優れ 夏用の衣類や ハンカチ テーブルクロス等に使われてます。(JRの特急などの 座席の頭の後ろの白いカバーは ラミー製のものもあるようです)

苧から作られた繊維は 日本では越後上布(エチゴジョウフ)が有名で、小千谷縮(オジヤチヂミ)と共に 重要無形文化財に指定されています。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

リネンとは(linen) 亜麻とは(アマ) リンネル(liniere 仏語)


リネンとは、アマ科に属する亜麻植物の靭皮部分(ジンピブブン 外皮のすぐ内側にある柔らかな部分)から 作られた繊維です。フランス語読みはリンネル また亜麻とも呼ばれます。の一種です。

コットン(綿)が広く普及する以前は、ヨーロッパではリネンが シーツやタオル 寝具 下着などに広く大量に使わた 非常にありふれた布生地でした。綿花は温かい地方の植物で ヨーロッパでは 栽培が困難だったせいもあります。

その名残で リネンと言う言葉が シーツや寝具等の用語などに残ったようです。私達が「麻」と言うと 一般に固いザラザラしたラミーramie 同じ麻類)のイメージが強いですが、リネンは それらよりは柔らかいです。

現在の主要途は、縫い糸 レース 服地 芯地 インテリア等です。

旧ソ連地域と ベルギー オランダ ポーラントで生産されますが、旧ソ連地域が70%以上の生産量を誇ってます。質がいいのは オランダ産 ベルギー産などで、オランダ産のクートレ亜麻は300麻番手の糸(番手は 数字が大きいほど細い糸で、質が良くて一本一本の繊維が長くないと 細い糸を紡績する事は困難)を紡績することができると言われてます。

繊維束の状態をフラックスと言い 糸や布生地になると リネンとも言いますが、厳密な用語上の区別はなく 一般にはリネンと言われます。

紀元前3千年頃のエジブトの交易品に「リネン」の記述が見られ、人類最古の布生地と言われています。

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。

麻とは(アサ)


とは、植物の茎や葉から作った繊維の総称です。人類が最初に 作った布は麻で作られたと言われています。

靭皮部分から作るものは 比較的柔らかく 衣料用として使われます。主に ラミーとリネンがあり、日本では「麻」と 一くくりに呼びますが、欧米では リネンとラミーと区別して呼びます。

(家庭用品品質表示法では リネンとラミーのみが麻となります。それ以外は 指定外繊維表示になります。昔 綿があまり普及してなかった頃は、シーツやタオル 肌着等は リネン製でした。その名残が ホテルの「リネン室」等に残ってます。それらの用途は、綿が普及すると 駆逐されてしまいました)

葉脈から作るものは、固いものが多く 産業用資材(ロープや穀物袋 畳のへり等) インテリア等に使われます。

麻の一般的性質は 下記で、夏の衣料用として 優れている点が多いです。

  • 吸水性が速く 吸い込んだ水分も速く蒸発させる
  • 丈夫で光沢(衣料用になると 強い撚糸がかけられ、光沢がないものも多い)がある
  • 熱の良導体

ただ 非常にシワになりやすく、現在は他の繊維に押されて 生産量が少なく価格が高いのが欠点です。

(余談ですが、大麻は麻薬で 葉を乾燥させたものを マリファナと呼ぶようです。種子の所持は違法ではありませんが、栽培すると違法(おかしな法律ですね)ですので 絶対に止めましょう。軽い気持ちで吸って どんどん強い刺激のものが欲しくなり 麻薬中毒になってしまいます)

この記事は 布生地通販の生地屋店長の三浦宗之が書いています。